何も知らない日本の親子

≪「娘を留学させてはいけない」(高橋美津子著)「留学せんこと」(大澤真知子著)を読みましたか?≫

 おふたりが書いていることは決して大げさなことではありません。 今から20年以上前の1990年、文部省から各都道府県知事宛に、 高等学校生徒の留学で各種の問題が生じているという報告書が送付されています。(注1) 1993年にも高校生の交換留学問題は国会で取り上げられており、 当時すでに高校生の四人に一人が何らかのトラブルに巻き込まれていることが「衆議院会議録」に書かれています。(注2) 子供でもわかるような被害レベルのものから、大人ならわかっても16~18歳ではごまかされてわからないもの、 バレていないだけのものまで含めると、ホストステイ先でのトラブルは実際はもっと多いと思われます。 外国語の能力が無いに等しい高校生が未知の国に足を踏み入れる交換留学では、 たとえ被害にあっていてもわからない場合もあるでしょう。 さらには子供だけではなく親にも同じことがいえます。 被害があっても気づかない、留学団体にうまく丸め込まれて納得する親がいることも被害を助長させているのではないでしょうか。 それに高校交換留学では滞在期間が一学年間(10ヶ月)なので、 少々のトラブルなら子供が帰ればそれで終わりとなります。 被害に遭って留学団体を訴えようとする親もいますが、 海外での事だけに話が進まず断念することが多いようです。 このように被害やトラブルがあっても個人レベルではどうしょうもない、国も何もしてこなかった、 気が付くとこのような状態のままで半世紀以上過ぎてしまいました。

 それにしても、どうしてここまでトラブルが多いのでしょうか? 一番に考えられることは、高校交換留学にとって必要な無償の受入家庭が、 イギリス、カナダ、ニュージーランド、オーストラリアなど英語圏の国々ではほとんど無いにもかかわらず、 そのことを伏せて留学生を送り続けているからです。 そもそもホスト家庭の犯罪歴については個人情報保護法があるということで、 最大手の留学団体AFSやYFUでさえも調べることはできません。(注3) 極端な場合、前日まで刑務所や精神病院にいた人であっても、現地スタッフが知らなければホストになれるのです。 つまり現地の交流団体関係者の裁量のみに頼っている状況にもかかわらず、 肝心のボランティア制度そのものがほとんど機能していないのです。 この状況が変わらない限り、どの斡旋団体で行っても被害に遭わないとは言い切れないでしょう。 じっさいホスト先が学校の先生宅であったり経済的に恵まれた家庭であれば、 ボランティアに対する意識も高くトラブルも少ないのですが、 有償で留学生を受け入れるホスト先ではどうしてもトラブルが多くなるようです。

*「留学せんこと」著者の大澤眞知子さんのブログ 当ページの「何も知らない日本の親子」が紹介されています。

(注1)「報告書」http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/nc/t19900711001/t19900711001.html

(注2)「衆議院会議録」 http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/126/0395/main.html薮仲分科員発言の個所をお読み下さい

(注3)トップ・ページ【トピックス】にある米国務省関連記事をお読み下さい

≪高校交換留学(ツアー会社が企画する語学研修等でも)では、海外に携帯電話やPCを持っていくことを禁止したり、留学先から保護者に連絡することを制限するのはなぜ?≫

 ここで考えなければいけないことがあります。 携帯電話については複数の留学団体から、「受け入れ国アメリカから所持させないようにと言われている」 「多用することで留学生活に支障をきたすから」と聞かされました。 なるほど後者の言い分は理解できるとしても、「アメリカから言われている」だなんて何だか可笑しな話しですよね。 この米国からの通達が本当だと仮定しても、留学団体が今どきこのようなバカげたことを言うのはなぜでしょうか。 そういえば無事保護され本当に良かったのですが、日本の高校生がNYで行方知れずになるというニュースがありましたね。 聞くところによると、語学研修ツアーだったにもかかわらず携帯電話の所持を旅行会社から禁止されていたそうです。 有事の際のリスクを冒してまで旅行会社が携帯電話を持たせたくないその理由の方が気になるのは、はたして私だけでしょうか。

 そのうえPC所持も禁止となると、留学生にとって事情は少し変わってきます。 高校交換留学生の派遣先は都市部ではなく郊外や田舎がほとんどで、そういう地域にある学校ほどPCが使われるからです。 学校の先生からの連絡や宿題の提出にもPCが使われ、9年生にもなるとプレゼンのためにパワーポイントが必要な場合もあります。 学校にあるPCを使ったりホストのPCを借りるという方法もあるのですが限度があります。 現地の学生と同じように宿題がこなせる留学生は少ないかもしれませんが、それでも英語力のある子もいるわけで、 交換留学生だからといってPCが使えないために不自由な思いをしたり正当な評価をしてもらえないことは避けなければなりません。 それに留学生だからプレゼンしなくてよいのでしょうか? 英語力のある子ほど必需品となるのがPCなのです。

 これらのことから学業に必要なPCであるにもかかわらず交換留学生だからといって持ち込みを禁止するのは不自然です。 私の場合、子供には携帯電話のかわりにPCとウエブカメラを持たせました。 そしてこれがまた現地トラブルの際にはとても役立ちました。 いずれにせよ”子供の自立を妨げないため”といいながらも ”孤立させて団体側の思い通りに子供をコントロールするため”と思われても仕方ない状況であることは確かです。 留学団体やツアー会社としては不都合な情報がリアルタイムで発信されると困りますから。 都合の悪いことは過去の出来事にすることで捏造・責任逃れ・責任転嫁し易くなります。 子供たちに持たせたくないのもうなずけますよね。 下記の≪関連サイト≫にある二つのブログ 「AFSで行く前に~オリエンでは聞けない体験記」 「AYUSAでの体験記」は特殊な事例などではありません。 よほどの被害やトラブルでない限り、帰国した子供から聞かされてはじめて現地での酷かった状況を知ることになります。 ましてや性的虐待を受けた場合は心にしまい込む高校生がほとんどだと思われます。

【参考までに】イギリスでは成長期(小学生)の子供の脳に電磁波が無害だという科学的証拠が無いということで使用制限を勧告しており アメリカでも同じ理由で持ち込み禁止の学校もあります。

≪高校交換留学ではホスト家庭も学校も無償の受け入れなのに130~150万円の費用がかかるのはどうして?≫

 現在では毎年、短期と長期あわせて3000名以上の日本人高校生が世界各国へと旅立っており、まさに金の成る木そのものです。(注1)  日本からはオーストラリアやニュージーランドといった英語圏以外に、ヨーロッパ諸国、アセアン諸国などへも行ってますが、 やはりアメリカへの交換留学が大半を占めています。(注2) そのアメリカの場合、受け入れ家庭は無償奉仕となっていますが(子供達からの報告では補助費と称して月4万円位ホストに支払われている場合もある)、 留学生を預かることで税金が控除される制度があります。 その補助費や税金控除目当てでホストファミリーになる者もいて、ホストの質を考えると問題無いとは言い切れません。 一方、オーストラリア・ニュージーランド・カナダやイギリス(現在ではボランティアの受け入れは殆どない)では、 受入れ奨励金という名目で留学生一人につき、学校やホスト家庭に各々数十万円支払われている場合もあります。 もちろんこれは、本来の交換留学プログラムとしてあってはならないことです。

 でも大半の留学先が無償受入れのアメリカであるなら、億単位のお金はどこへいっているのでしょうか。 AFSやYFUのように大勢の生徒を派遣している大手の団体でも、職員数は2008年当時で学生アルバイト者を含め7~15名程度でした。 あとはボランテイアの人たちが動くわけですから、組織を運営するための経費を差し引いても、 公益財団法人としての国からの補助金、企業等からの献金もあわせるとかなり残りそうです。 日本のようにホスト先が限りなく無償のボランティアであればあるほど、これまた美味しい話ってことにもなりますし。

 また、交換留学生の受け入れと派遣のバランスは非常に悪く、日本から英語圏に行く生徒の方が圧倒的に多くなっています。 このことは日本では留学生を受け入れた家庭の子供が留学する場合でも130~150万円支払うのに対し、 英語圏の国からは留学生を受け入れた場合は飛行機代だけ払えば日本に来ることができる、ということと無関係ではありません。 英語圏に行きたいと願う日本人留学生が日本に来る留学生の費用を負担しているともいえます。 さらに日本では当初の理念どおり交換留学生は親善大使として我が子同然に接するのに対し、 英語圏の多くの国では一部のすばらしいホストの方々を除き、お手伝いさん、間借り人程度にしか思われていません。 これらのことからも、不透明なお金の流れと不公平性を強く感じます。

(注1)団体や派遣先国の事情、その他の理由により一定ではありません

(注2)現在の留学者数ついてはトップ・ページをご覧ください

さてさて、それでも交換留学を夢見る皆さん!これらのことを踏まえ覚悟して取り組むようにしてください

・子供からのSOSを見逃さない。

・何かあった時には留学団体任せにしないで親が現地まで(迎えに)行く。あるいはすぐ帰国させる。

・留学団体やホスト先を無条件に信用しない(ステイ先での貴重品管理、女の子は就寝中は施錠する等)。

・トラブルの際には留学団体を介さず子供と直接連絡が取れるよう準備しておく(携帯電話やパソコン等は必ず持たせる)。

・留学生の親同士が繋がることで情報を共有しておく。

・斡旋団体にはうるさい親だと思われるくらいでちょうどいい。

≪高校生留学関連サイト≫

・「オリエンでは聞けない体験記」(大手留学団体 AFSでの諸問題を扱っているサイト)

高校留学の真実―AFS交換留学生の証言

・「AYUSAでの体験記」(えっ!という話もあるが、高校交換留学の実態が垣間見える)

ホストファミリーについてQ&A(現地での酷い状況に対し興味深い複数回答が寄せられている)

・yahoo知恵袋から、興味深いものを集めてみました(語学留学のものも含まれているが参考になる)
1.こんにちは、今、オーストラリアに留学中の高校2年女子です。
2.私の高校留学は失敗だったのか?
3.今カナダのトロントでホームステイをしています。
4.日本で留学生を滞在させたとき困ることのひとつが金銭感覚の違いです。

高校生留学についてのQ&A(ホームステイ先について)

カナダでの留学トラブル

・「娘を留学させてはいけない」(高橋美津子著)(留学失敗談のオンパレードとして読むだけなら、カスタマーレビューのような感想になってしまうのでしょうね)

元留学カウンセラーの本音

高校生の留学掲示板から