誰も知らないALT

皆さんは、ALT(Assistant Language Teacher)っていわれる人たちのこと知っていますよね? 小・中学校や高校で、英語の授業のアシスタントをしている外国語指導助手のことです。 さて、ALTの雇用については、国の「JETプログラム」(注1)によるものと、 民間業者への委託(業務委託契約や労働者派遣契約)があります。 当初は報酬は高いが講師の質も高い(?)といわれる「JETプログラム」を利用した雇用が主でしたが、 現在では自治体が繁雑な作業を避けるため、民間業者への委託が増えています(注2)

 この「JETプログラム」とは、「語学指導等を行う外国青年招致事業のことで、 それぞれの出身国で「JETプログラム」参加者として募集・選考事務(面接等も)が行われます。 外務省、文部科学省、総務省が地方自治体と協力して、 外国青年が日本の学校で語学指導を手伝ったり(参加者の90%以上がこのALTといわれる人たち)、 自治体で国際交流員(CIRという)やスポーツ指導員(SEAという)として協力する機会を提供する事業で、 世界最大規模の”人の交流”プログラムともいえます。 全国各地における学校や行政組織の中で、地域や住民に密着した活動を行うことで日本を経験し、 母国に帰った後も親日家として様々な分野で活躍することで両国間の貴重な橋渡しとなると謳われています。 契約期間は一年ですが、契約団体が合意すれば最高4回までの再契約が可能なので、最長5年間の滞在が認められます。

 ところでこの「JETプログラム」は、公益法人「自治体国際化協会」(通称CLAIR)がJET事業としてやっています。 毎日放送「VOICE」でも取り上げられましたが、石原都知事、(当時の)橋下大阪府知事からも、 官僚の天下り先、税金の無駄使いということで分担金削減とまで言われたところです。 それにこの「CLAIR」のJET事業については、以前から専門家の間でもその必要性が問われています(注3) 努力して結構なレベルの日本語を話せるようになり、まじめに国際交流に貢献しているALTもいますが、 稼ぎ目的、小児性愛者、薬物愛好者、資格として必要な学士証明書の偽造も囁かれる等、 人物審査基準について疑問の声が上がっています。 週2~4日学校に来ても仕事は殆どなくパソコン室でゲームをして過ごす、 月30万円では足らないのかアルバイトのためにさっさと帰る、 英語話者のはずなのに英語がきちんと話せないALTもいるとのこと、 これらのことは学校の先生も見て見ぬ振りのようです。 週5日(月~金)35時間労働、勤務時間以外の役割として放課後の課外活動やクラブの手伝い、 ボランティア、地域イベントに参加することが求められているにもかかわらずです。 そして一番の問題は、心ある人々がこのような情報提供をしても、無視するか問題なしとの回答があるだけで、 「CLAIR」はもとより、外務省や総務省も真剣に取り合おうとしないことです。 これらのことからも、やはり当時の都知事や大阪府知事も指摘しているように、 下り先を温存するための「CLAIR」であり、JET事業であるように思われても仕方ありません。

 この「JETプログラム」参加者には、年間360万円(手取り月30万円)の給料が支払われています。 それだけではなく、渡航費、住居費、保険料、運営費等も入れると、1人にかかる費用は年間600万円以上ともいわれており、 平成16年総務省自治財政局の資料では招致人数6103人、年間でおよそ400億円が使われていることになり(下記の総務省資料より)、 2012年7月1日現在では4360人となっています。 また、「JETプログラム」の参加者の中には、配偶者(なぜか日本での労働許可もおりる)を本国から連れて来る者もいて、 無職の配偶者にも、教職員の子供が受けるのと同じ保険の恩恵を受けられます。 そして、それらの費用は全て私達の税金から賄われているのです。 ちなみに現在の日本では、大卒の初任給平均は2001年の調査開始以来、初めて20万円台に乗ったところです。 学校教員の初任給はボーナスを含めておよそ年330万円、非正規雇用教員ともなれば平均170万円位で、 もちろんALTのように住居費や保険料はつきません。

 そもそも、このJET事業そのものは、バブル期においての日本と主にアメリカとの間の貿易不均衡とそれに伴うジャパンバッシングを緩和するため、 1987年に外務省の主導で導入された制度とも言われています。 早い話しが、英語圏にいる日本にでも行ってみようかなと思う若者に、日本がタダでお金を与えましょうという、 要するに何でもいいから日本からアメリカにお金が流れるようにしなければならなかったということです。 それなのに、こんな都合のいいシステムで恩恵を受けているにもかかわらず、日本に感謝するどころか日本の悪口を言い、 挙句の果てには日本人をジャップ呼ばわりするALTも少なくありません。 このことは下記に紹介したALTのコミュニティーサイト”bigdaikon”でも確認できます。(*bigdaikonは、2012年10月頃に閉鎖しています)

 また、JET事業の、母国語が英語の大卒者なら誰でもなれるという安易な選考基準も問題です。 実際のところ、大学を出たばかりで職のない学生が軽い気持ちで研修を受けてうまくいけばALTとして活動できるものだからです。 ただ、大学で優秀な成績を収めるような人材は、自国の企業に就職できるので、考えてみればそれなりの人材が流れてくるわけです。 ましてや、給料を貰いながら日本観光ができるみたいな募集をしている限りは、職業意識のない人達が集まって当然でしょう。 それにもうひとつ考えなければいけないのが、英語が母国語だからといって、英語が教えられるわけではない、ということです。 例えば、日本語が母国語の大卒者であれば誰もが外国人に日本語を教えられるのでしょうか?答えはノーだからです。 話し相手になることと、外国語を系統立てて教えることは同じではありません。 ちなみに米国・オーストラリア・英国等で英語を教えるには、TEFL,TESL,TESOL ,ELTなどの資格が必要です。 (最新の「CLAIR」のパンフレットでは、「TEFL」の習得を支援している、日本語習得のために必要な講座を用意している、と書き加えられてはいますが)(注4)

 このプログラムが導入されて早20年以上が経過しましたが、プログラムの目的の1つと言われる国際交流も、 どこにどのような効果が出ているのか、まるで見えてこないし、日本人の英語力は依然としてアジアの最下層に位置したままです。 それどころか、英単語数ひとつとっても、現在の学生は1970年代の学生よりはるかに劣っているという、興味深いデータもあります。 ETSの調査によると、日本人のTOEFL受験者の平均スコアはiBT65で、特にスピーキングセクションの平均点は全世界で最下位です。 巨額を投じてALTを雇っているなら、今の日本、英語の習得当たり前、さぁ第三ヶ国語にいくか!になっているはずなのに。 ちなみに2014年のサマリーによると日本人の平均スコアは5点上がって70点、それでもまだ全受験者の平均80点を大きく下回る状況となっています。

 外国青年招致事業も当初の役割はもうすでに失っている現在では、廃止も視野に入れた検討がなされるべきだと思います。 ネット世論調査(注4)でも、半数以上が税金の無駄使いだと反対していますし、mixiコミュでも、在米日本人、英語教育関係者の間では、 「JETプロフラム」廃止に向けて活発な意見交換が行われています。 ひと昔前とは違い、多くの外国人を見かけるようになった今、国際交流のために巨額を投じてALTを雇う理由があるのでしょうか? 各自治体が財政難に喘ぐなか、母語が英語で大学卒あるいはその予定者であれば、たとえ犯罪歴があってもOK(注5)、 国際交流の名の下でたいした仕事もなく教える資格も持たないALTに、何百億円単位もの私たちの税金を使う必要があるのでしょうか? それに日本の国際化を真剣に考えるなら、日本人による日本人のための英語教育から、もう一度考え直すべきではないでしょうか? 巨額を投じてALTにお金を使うのではなく、そんなお金があるのなら、英語を教える資格を持っている人間を雇ったり、 地道に努力されている日本人英語教師のサポートに使うとか、違うやり方や違う方法があるはずです。 どちらにしても節税が叫ばれ続けている昨今、このようなALTに、初任給年俸360万円なんてあまりにも 高給過ぎると思いませんか! ようやく2010年5月に、(財)自治体国際化協会が事業仕分けにリストアップされましたが(注6) 「JETプログラム」の改正・廃止も視野に入れた皆さんからのご意見、ご提案があれば投稿欄までお願いします。

*ALT情報については、MIXIコミュ外国人英語講師はバカばかり(すでに閉鎖)から一部引用しています

(注1)「JETプログラムは廃止すべき!」「政策研究レポート」より自治体総合政策研

(注2)民間業者への委託についても「JETプログラム」同様、さまざまな問題が起こっています。トップ・ページ【トピックス】から「文科省もやっと気づいた!外国人の指導助手(ALT)巡る問題山積」をお読みください

(注3)http://www.clair.or.jp/j/docs/pamphlet.pdf 自治体国際化協会(CLAIR)パンフレット

(注4)http://www.yoronchousa.net/result/3641(ジェットプログラムについて【世論調査・net】より)*すでに削除されています

(注5)http://www.jetprogramme.org/j/introduction/index.html パンフレットPDF「JET参加者」の項へ

(注6)http://www.cao.go.jp/sasshin/data/files/650201a9-a7bf-fa50-9d3e-4bf3dbb8e62f.pdf 2010年5月21日(金)行政刷新会議「事業仕分け」作業スケジュール

http://www.youtube.com/watch?v=pZzI1VzSGkg自治体国際化協会(CLAIR)「事業仕分け」の様子(動画)0:27~

≪トピックス≫

・2013-09-27 SET(スーパーイングリッシュティーチャー)が大阪にやって来る

・2011-05-27 大阪府「使える英語プロジェクト」に“英語が使えない外国人講師”

・2010-05-30 ALT招致事業が 5月の事業仕分けにリストアップされる

・2009-09-04 文科省もやっと気づいた 外国人の指導助手(ALT)巡る問題山積

・2009-07-20 沖縄県で3人、兵庫県でも外国人英語教師(ALT)が逮捕されている

・2008-09-22 高等学校の外国人英語教師(ALT)が逮捕される

≪ ALT,JETプログラム(CLAIR)関連のサイト ≫

http://www.youtube.com/watch?v=RFRP0rM7Oz0(テレビ番組から「財団法人自治体国際化協会~CLAIR」の実態 橋下大阪府知事怒る!)

http://www.nnn.co.jp/dainichi/news/090625/20090625029.html(2009年6月25日付 大阪日々新聞記事より 橋下大阪府知事)

*すでに削除されています。書き起こし→「知事、自治体国際化協会の改革案を批判!2009年6月25日、 地方自治体の国際交流を支援する総務省所管の財団法人「自治体国際化協会」が、 役員報酬をカットし全国の都道府県などに求めている分担金を減額する方針を固めたことについて、 大阪府の橋下徹知事は24日の定例会見で「小手先の改革案だ」と批判した。 批判の理由として、橋下知事は「この事業が必要だから負担金を、というのがない」と指摘。 「25日の(同協会)理事会には府民文化部長を参戦させ、暴れ回らせる。改革案は絶対に許さない」と予告した。 また、役員報酬については「役員報酬を下げるといっても知事並みだ。 次官を辞めた人は選挙で選ばれる知事より偉いのか」と報酬額に疑問を呈した。同協会の理事長は総務省の元事務次官という。

http://sankei.jp.msn.com/region/kanto/tokyo/090316/tky0903161857007-n1.htm (石原都知事も「自治体国際化協会」 への分担金必要なし)※すでに削除されています

http://www.soumu.go.jp/iken/pdf/c_keikaku_17-5.pdf(平成16年総務省自治財政局資料15ページ目から)

http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1329394128 (ヤフー知恵袋より)

http://ncem.jp/forum/forum01/wforum.cgi?no=15&reno=14&oya=13&mode=msgview&page=0(ALT導入しても国の体制整わず 毎日新聞2006年8月24日)*すでに削除されています

http://homepage3.nifty.com/m-szk/alt.htm(ALTは英語の勉強をしろ!)

http://www.bigdaikon.com/mystory-miho.shtml(ALTのコミュニティサイト”bigdaikon”「ジャップ!」のオンパレードです)(英語 ※”bigdaikon”は2012年10月頃に閉鎖されています。

鳥飼玖美子さんの著書「『英語公用語』は何が問題か」の第五章:「ビジネスと英語教育」でもALTの問題が取り上げられています