いつのまにか無くなっていた「高留連」と「ガイドライン」

 私も知らないうちに、「高留連(全国高校生留学・交流団体連絡協議会)」が今年の6月4日に解散していました。2006年度の10団体から2011年には4団体にまで減少していたのですが、まさか無くなるとは思っていませんでした。このサイトでも「高留連」のチェック機能が実質的には働いていないということを指摘してきましたが、この度の「高留連」の解散は重大な意味を持つことになります。要するに留学団体に対するチェック機能が制度的にも消失してしまったということです。「海外留学プログラムガイドライン」が無くなれば、留学中に生じた問題が被害やトラブルに相当するか否かの基準がなくなります。そうなれば被害者自身が被害を被害として認識できなくなるだけでなく、文科省や消費者庁に被害を訴えることも難しくなってしまいます。裁判を起こさない限りは泣き寝入りしかなく、被害の実態がますます覆い隠されてしまいます。 また、公的なガイドラインが無くなることで、留学団体に対する文科省からの監視の目が届きにくくなります。今までよりも自由奔放にプログラムを運営できるわけです。生死にかかわるような大事故や事件(※1)で無い限りは、団体独自のマニュアルを振りかざして被害やトラブルを押さえ込むことになるのでしょう。

 そこで文科省にその解散理由と「海外留学プログラムガイドライン」に代わるガイドラインの有無を聞いてみました。 担当者の話では「『高留連』の元幹事長、元副幹事長からは、お金だけ取ってオリエンテーションをしない酷いホストファミリーに派遣しておいて、強制的に帰国させるなど会員団体にトラブルが多かったので解散になったと聞いている。いま現在ガイドラインといえるものは無い。文科省として新たに策定する予定もないため被害やトラブルは留学団体に言うしかない。」ということでした。これには驚きました。そもそも「高留連」は、トラブルや被害の増加から高校生を守るために「海外留学プログラムガイドライン」の必要性が生じ、そのガイドラインに沿って留学プログラムが運営されるために設立された(1992年6月)経緯があるからです。トラブルが多かったから解散したとはなんとも呆れた話です。

 ところで文科省への報告のなかで、オリエンテーションをしない団体がいたことが解散理由のひとつのようでしたが、「私たちはオリエンテーションしているので大丈夫ですよ!」とアピールしている団体の存在が気になります。 「高留連」は複数の留学団体の集まりでしたが、その幹事長、副幹事長を務めていたのは、会員団体の中で最も多くの派遣人数を抱えるYFUとAFSの関係者でした(※2) この二つの団体はオリエンテーションを行なってはいますが、これまでも多くのトラブルを抱えています。 オリエンテーションの話を持ち出すことで、自らの団体のトラブルには言及せず、解散の主な理由を他の団体に転嫁するようなやり方は、留学制度そのものから生じた問題(責任)を子どもに押し付けることと似ています。その意味でも今回の「高留連」の解散は、留学団体に自浄作用がないことを象徴する出来事といえるかも知れません。

(※1)1992年10月17日、交換留学生の服部剛丈君(当時16歳)が射殺される事件がありました。詳細については「YOSHIの会」へ。

(※2)YFUと AFS両団体のトップ2人(推進側)が「高留連」の幹事長、副幹事長(規制側)を兼任していました。

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